金メッキが与えるもう一つの価値
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スワオメッキさんの工場を見学した後、茶こしのメッキについての話題が広がります。
金メッキ仕様の茶こしには一体どんな価値があるのでしょうか。
鈴木康仁さん
新潟県燕市、金属の表面処理加工(メッキ加工)を専業とするスワオメッキ有限会社常務取締役。29歳の時に家業であったスワオメッキに入社し、自社の技術を広げるべく奔走中。令和3年度燕商工会議所青年部会長を務め、燕市内の企業間の連携強化にも尽力している。燕市独自のものづくり品質管理制度「TSO(Tsubame Standard Organization」2013 年取得。装飾性と抗菌性を備えるゴールドメッキの技術は市内外の企業から幅広い支持を集める。
※聞き手:山後隼人(新越ワークス スリースノー事業部)
茶こしをメッキする
山後「ところで話が変わりますが、今回は茶こしにゴールドメッキをしていただきました。先ほど工場にてそのプロセスを説明していただきましたが、実際にメッキが完了するまでは何工程くらいかかっているんですか?」
鈴木「洗浄の工程から数えると9工程くらいだね。ちなみにその70%が洗浄工程になります」
山後「7割も!すごい。工程数を聞くとやっぱり洗浄工程ってどれだけ大切かわかりますね。そこからメッキ、乾燥、包装という手順ですね」
鈴木「そうだね。一つ一つの工程で必ずチェックしています。次の工程に不具合品を流さないように工程内検査をするんです。ただ、今回の網はなかなか難しかったね(笑)」
山後「やっぱりそうなんですか」
鈴木「これまでの先入観で、大丈夫だろうと思って商品を流してみたんだけど、途中でその難しさに気づいた。さっきも話したけど、そこから洗浄工程に一工夫かけるようにしたんだよね。チェックしたつもりなんだけど、チェックできていない時ってあって…(笑)」
山後「とてもよくわかります(笑)。私たちの工場でも思い当たる節はあります」
鈴木「そうだよね、どうしても仕事をしていると何かと並行してやっている分、抜け落ちてしまうことだってある。大切なのはそこからどう学んで次同じ失敗を繰り返さないかってことだと思う。だから失敗したら“学べた”からむしろ良かったと考える方が次につながる」
山後「その通りですね。私たちも新しい商品を開発する時には、試作から量産という段階に移っていくのですが、試作の時には異常がなくても量産の時に初めて異常が発生することがあります。でも作っている側からしてみたら試作が上手くできたんだから量産も上手くいくはずだと思っている。こういうケースって工場にありがちだと思うんです。言うなれば、”予期せぬエラーは未然に気づけない”ってことだと思うんです」
鈴木「わかるわー。今回のケースがまさにそれ(笑)。数個だけメッキした時には綺麗に仕上がったのに、いざ大量の茶こしをメッキしようとしたらエラーが出たんだよね。そこが難しいところだったし、エラーが実際に出てから気づいた。でも確かに今回のこれは勉強になったよ」
山後「そう言っていただけて救われます。ありがとうございます!」
課題はシェアして学び合う
鈴木「ちなみに新越さんでは、そんな時にどうやって解決しているの?」
山後「私たちもまだまだ課題はたくさんありますが、適切なタイミングで顧客や営業の評価があることは肝心かなと思っています。工場で作業する担当からしてみたら”同じ工程で同じ商品を作る”と思っているけれど、実際は量産時に少し環境が違うことって往々にしてありますからね。そこで生じるエラーに対しては構えている必要があります。評価工程を組み込んで品質 OK かを念入りに確認するという感じですね」
鈴木「なるほど、確かにそれはあるね。やっぱり共通する部分はあるねー」
山後「そうですね、学び合いですね。スワオさんのメッキだと、色味も特徴の一つに謳っているところもあって、色の具合でちょっと想定より違うっていうパターンもあるんじゃないですか?」
鈴木「あるよ、まさに。光も蛍光灯の種類によっても違うし、もっと言えば自然光に当てればもっと違う。お客さんの評価や自分たちの評価もそういう環境が変化する部分を含めて確認していかないといけないんだよね。どういう光が当たった時の色の見え方なのか、ってところ」
山後「そうですよね。確認とコミュニケーションが求められる部分ですね」
鈴木「まさにそうだね。しかし、こうして話していても通ずる部分があって面白いね!(笑)」
金属面の匂いが消える!?金メッキの持つもう一つの魅力
鈴木「ところで隼人くんこの3種の茶こし、匂いを嗅ぎ分けてごらん」
山後「はい。…ん?メッキした茶こしとメッキしていない茶こし、匂いの違いがわかる!メッキした茶こしからはあまり匂いがしないというか」
鈴木「そうでしょ、より金属臭がなくなったと思わない?ステンレスの。これ、ゴールドメッキの効果だと思うんだよね。ステンレスの製品にゴールドメッキやピンクゴールドメッキをした商品っていうのは、以前から”金臭さが消える”と思っていたんです」
山後「そうなんですね、面白い!新しい発見です!」
鈴木「今回のタイミングでぜひ話そうと思っていたんだけどね。新しく付け加えられる付加価値だと思って」
山後「とても大切なポイントだと思っていて、お茶ってやはり水を繊細に扱いますし、香りを楽しむ要素が強いんですね。だからお茶道具も必然的に、水や茶葉の可能性を最大限に引き出せるものであることが望ましいと思うんです。茶こしはステンレス製で器などと比べればまだ金臭さに対してもそこまで影響は少ないのではないかと思っていたのですが、こうして匂いが抑えられている商品を知ると“これいい!”ってなりますね。今日このタイミングで言われるまで気づきませんでした」
鈴木「気づかなかったろ?(笑)イエローゴールドは金成分、ピンクゴールドは銅成分と金成分が含まれているんだけど、どちらもほぼ匂いが消えている。今回うちがメッキした茶こしというのは、従来品に比べて①装飾性、②抗菌・抗ウイルス性、③食品衛生法対応、④耐食性(対変色性)が UP したのに加えて⑤金属の匂いも無くなった。めっちゃ付加価値だらけなんだよね」
山後「本当ですね!いいことだらけですわ」
鈴木「宣伝しよう(笑)」
山後「もちろんです!(笑)従来品に比べて価格は高くなりますが、これだけの付加価値がついているという点でも自信を持って販売できる商品だと思っています」
鈴木「この付加価値は、必ず飲食業界にも応用できる。この価値を理解してもらえてこの機能を活かせる商品があるならば、まだまだ需要はあるなと思っています」
山後「そうですね、道具には飲食店、料理人のポテンシャルをさらに引き出す一つの要素でもあるので、道具の価値が上がることは飲食業界にとっての成長にもつながるのだと思っています」
燕の可能性は「無限大」
山後「今後の展開も楽しみですね」
鈴木「俺はこれからも社員の皆さんが働きやすい環境を作って、技術力を高めていって、お客さんとどんどんコラボしていく。そこを目掛けてやっていきます」
山後「素晴らしいです。この抗菌性のある金メッキの効果や可能性が、例えばこの商品や記事からでも広がってくれたら嬉しいですね。それでこの技術の恩恵に預かれる人が少しでも幸せになってくれることを願いたいです」
鈴木「可能性は無限大らっけねー!組み合わせ方によっては本当に色々な分野に応用できる。宣伝もしていきたいし、これからも色々な商品でコラボしていきたいですね。もしかしたらこれまで作ってきた商品の中にも、気づいていなかった魅力や可能性が隠されているかもしれないし」
山後「そうですね。自分たちの工場だけで考えると限界があるかもしれないけど、価値を付加してくださる他の工場とタッグを組んでいくと新しい価値を作れる。これは燕の強みでもありますね」
鈴木「そうだね。色々な人と繋がって色々な声を聞きながら高め合っていくのは燕が昔から引き継いできた文化だよね。いいところは引き継いで、自分たちで新しく作っていくところは全力で作っていくしかないよね」
山後「これからもぜひ勉強させてください!今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました!」
スリースノーの茶こしの価値を何倍にも高めてくれるスワオメッキのゴールドメッキ。その可能性は燕の金属加工とともにあり、まだまだ大きく羽ばたいていくことでしょう。この商品を通して一人でも多くの方のお茶時間が幸せになりますように。
Text: Hayato Sango (ThreeSnow)
Photo: Atom Munemura (Office-Atom)
Edit: Mayuko Kimura