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  • 2026.11.07
  • 特集

抹茶スプーンを生み出す理由(Satenインタビュー中編②)

第4章 「使いやすい」を形にする、抹茶スプーンの開発秘話

小山和裕さん(以下、小山):(株)抽出舎CEO。日本における抹茶ラテの火付け役として業界を牽引する東京・西荻窪の日本茶カフェのSatén Japanese Tea を経営。店を経営する傍ら、茶葉や茶器の卸販売やプロデュース、商品開発なども行い、日本茶のワークショップや専門学校での講師業も行っている

聞き手:山後隼人(新越ワークス スリースノー事業部)

-「漉しやすい」スプーンが欲しい

山後「これが開発当初、小山さんに相談した時にメモしたものです。懐かしいなと思って今引っ張り出してきたんですけど」

小山「懐かしい。僕はこういうメモをとっておかないから!(笑)」

山後「一番最初は丸っこいただ普通の形のスプーンをかたどってみたんです。ストレーナーのカーブに合わせたいと思って。我々がザル屋なんで、ストレーナーに合わせるためのスプーンを作りたいねっていうことを言った時に漉しやすさを追求しました。

また、この商品が使われるシーンを考えるほどに、お店で使われるものとしてバー用品のような佇まいを意識するようになって。持ち手の強度を維持したまま細く仕上げるという困難性も最初課題だったんですよね。結果、厚みのある形になりここもクリアできました」

-3Dプリンタ試作で見えた課題

小山「そうですよね。もうちょっと長くしようとすると、Satenでもマドラーがわりに使っているスプーンに近くなるのですが、それも使っているうちにちょっと曲がってしまっているんです。もともとまっすぐなはずなんですけど。強度を保つために違う構造が必要になる」

山後「海外製のスプーンでコンセプトにも少し近い形状のものがあったんですが、やっぱりストレーナーに合ってないんですよ。すくうとなると、先ほどの話題にも出たように特化されたものは確かにいくつか見受けられました。我々はそこから「濾しやすさ」を追求した。実際に形作る段階になって、深くするための形状についてもいろいろ試行錯誤がありましたね。3Dプリンタで出力して試作品を確認していきましたが、手軽に試作できる材料がアルミ材しかなくて。それで作ってみたらストレーナーに「引っかかる」感じがあると。商品が軽すぎるという問題でしたよね。

小山「軽すぎると引っかかるというか押しにくかった。漉しやすさにはある程度の重さが必要だということがわかりました」

山後「形状のところも、実際には3Dプリンタの作り方とプレス方式の作り方では実現できる形が違う部分がある。今回のスプーンのすくい部はそこが課題でもありました。データを作ってしまえば、3Dプリンタでは比較的自由に作れるのですが、プレスで金属を押し伸ばして作る製法でいくと、深くしすぎると金属が割れたり、切れたりする。ただ小山さんとはこの形状に特徴を残したいと話していてできる限り当初の理想に近い形に仕上げてもらうようにお願いをして作ってもらいました。最終的には先端部分に濾しやすさを、すくう量を確保するために手前側が深くなり、スプーンを正面から見た時には正円に近い形に仕上がりました」

-膨大な先行研究が蓄積している燕の金属加工

山後「僕らは燕にいるので、スプーンについてはとてつもない量の「先行研究」が溜まっています。そういった業界に差別化された一石を投じるのはとてもハードルが高い」

小山「そうですよね。でも(他のスプーンに比べて)全然重さが違うんですよ。他の人からも「重い」って言われたこともあります。ああ、そうなんだと思いましたね。でもこの重さが良いわけであって、多分今この重さがあるスプーンは、百貨店とかで売られている、名のあるメーカーさん、ブランドさんのスプーンのやつしかないんじゃないかと思います」

山後「通常軽さを追求することのほうが多く、メーカーとしても原価も抑えられるのですが漉しやすさを追求したら違う結論でした」

-真似はできない

小山「形状も含めて見た人誰しもがこれに気づくことは多分ないと思います。こだわってる感は伝わると思いますが(笑)」

山後「そうですね。パッと見、変な形しているなーくらいに思われるかもしれないですね(笑)」

小山「でもこのストレーナーもそうですけど、例えばこれが売れて、スプーンも売れて、他が真似して作ってみようってなった時に多分作れないのではないかと思います。それはすごく重要だなと思うんですよ。似たものは作れる可能性もあるんですけど、同じものは絶対に作れない。作れそうで作れないものはすごく大事だなって思います」

商品開発の試行錯誤こそが製品のオリジナリティを生み出す。小山さんとの協働の話はさらに、未来の日本茶業界に向けた話へと移っていきます。

後編へつづく
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