言葉の持つ力①:ライターが見たものづくりの奥行き
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私たちにとって、息をすることと同じくらい自然に使っているものが「言葉」。人類史は言葉を獲得し使っていくことで、さまざまな形のコミュニケーションを形作ってきました。言葉によって概念が生まれ、関係性が構築され、道具が生まれてきました。世界のあり方を形作ってきたのが言葉であり、言葉は世界を豊かにも、使い方を間違えば不幸にすることもできる。そんな言葉の力を信じ、日々新しい世界を我々に見せてくれるプロこそが「ライター」という仕事人。木村真悠子さんはプロのライターでありながら、スリースノーの広報アドバイザーとして伴走してくれています。今回はそんな木村さんを通して見る言葉とモノづくりのお話し。スリースノーのニューフェイス、石島がその仕事を深掘りしていきます。

木村真悠子さん:東京を中心に、日本各地に活動拠点があるフリーランスのライター。雑誌「Discover Japan」で日本各地のものづくりを取材したり女性誌を中心に記事の執筆をするなど、幅広いジャンルを取り扱い、現在はアーティスト会報誌の執筆活動がメイン。企業のブランドづくり、広報コンテンツづくりなども手掛けており、現在はスリースノーの広報アドバイザーとして伴走中。「熱狂」が原動力。まどろむ酒器のパッケージに記されている詩は毎回、木村さんが書いている。
聞き手:石島雫(新越ワークス スリースノー事業部)
雑誌の世界へ飛び込む
石島 「ホームページのリニューアルに始まり、オンラインショップやSNSの開設などスリースノーの広報がここ3年で広がりつつあります。言葉やブランディングの顧問として伴走していただいている木村さんは、プロダクトの「育ての親」のような存在です。広報会議でお話しするいつものシチュエーションとは違うので少し緊張しています(笑)」
木村 「よろしくお願いします!普段私はインタビューをする側なので、される側の気持ちが分からず実は今日すごく緊張しているんですよ(笑)事前にもらった質問内容も新幹線でじっくり見返して考えたりしました」
石島 「早速始めていきますが、今の「ライター」というお仕事に至るまでの経緯を教えていただけますか?」

木村 「もともと「雑誌」という媒体に興味がありその業界に行きたいなと思い続けていましたが、大学を卒業してすぐは半導体メーカーで秘書業務をしていました。実はわたしにはとっても憧れている人がいて、中学生くらいからその人が出ている雑誌を穴が開くくらい見ていたりしました(笑) 次のキャリアを考えるタイミングで、もし仕事にできて憧れの人に会えるとしたらもともと興味のあった雑誌の世界だと思ったんです」
石島 「憧れている人というのはずばりあの人ですよね!」
木村 「はい、木村拓哉さんです!(笑)
もちろん憧れの人がいる世界ということもあるけれど、世の中のことも知りたかったし、人ともっと触れていろんな話をきく仕事がしたいと20代後半に脱サラしました」
石島 「憧れだった雑誌の世界に飛び込んだんですね」
木村 「当時は雑誌を読んでトレンドを学ぶくらい紙の力が強い時代で、編集の仕事を教えてもらうことから始まりました。いまで言うインフルエンサーのような存在の読モ(読者モデル)やカメラマンと一緒に雑誌を作り上げていったのがいまの私につながるキャリアのスタートだったと思います」
連鎖する出逢い
石島 「ファッション雑誌というキャリアと、いま関わっているものづくりでは分野が少し違いますよね。ものづくりに出会ったきっかけは何だったのでしょうか?」

木村 「そもそものきっかけは、伊勢丹のカリスマバイヤーと呼ばれていた藤巻幸雄さんです。百貨店では海外ブランドを扱うのが主流だった時代に、メイド・イン・ジャパンの価値に気づき “日本製”の価値に光を当てる先駆者になった方です。
藤巻さんが持っていた日経BPの連載でライターとしてご一緒したなかで、「酒器だったら絶対に燕三条のタンブラー」と熱弁してくださり、ものづくりの世界に足を踏み入れることになりました。藤巻さんから燕のキーパーソンとして紹介されたのが燕商工会議所の「高野さん」という方でした。「商工会議所の記念誌で取り上げる“地域ブランド“について取材して書いてみませんか?」というお話を高野さんからいただき、引き受けることになりました」
石島 「人が紹介してくれた縁がつながって燕に来たのですね」
木村 「「メイド・イン・ツバメ」という言葉があるくらい地域ブランドの色が強い地域ということは知っていたけれど、実は企業さんの内側に入ったことはなくて。記念誌の取材では10社程にインタビューをして「地域ブランド」について書かせていただきました。これが燕にぎゅっともう一歩入ることになったきっかけでしたね。藤巻さんと高野さん、この2人のおかげです」

木村 「取材というありがたい機会をいただき、先代の努力を積み重ねてきた土地だという印象を受けて、燕三条がより魅力的な土地に感じました」
石島 「 わたしも県外からきた人間なので、燕という土地やものづくりの面白さを感じたという点に共感できます。例えば家にも小さな研磨機があってお母さんが内職していたという暮らしがあったように、燕の人にとってはものづくりが当たり前で特別なことではないという感覚が逆に新鮮で面白いと感じます」
木村 「そうそう。暮らしと仕事が密接にかかわった土地だよね。わたしも東京の下町生まれ下町育ちでものづくりをしている人が小さいころから身近にいたからか、ものづくりに対して「心地がいいな」という感覚があります。 Discover Japanの仕事もしていた中で各地を取材したけれど、そのなかでも特にこの燕というエリアとはすごく相性が合ったような気がします」
熱量が集う

石島 「燕に来ることになり、新越ワークスとはどのように出会ったのでしょうか?」
木村 「ちょうど商工会議所の記念誌を寄稿するタイミングで、一緒にお仕事をしたオフィスアトムのカメラマンの宗村さんから「紹介したい燕のエースがいます!」と山後部長を紹介されました」
石島 「そこで登場したんですね!」
木村 「その当時山後部長が「あるアイテムで困ってることがあって相談したい」らしいということを宗村さんから聞き、すぐに新越ワークスのオフィスで会うことになりました。そこで見せてもらったのがまどろむ酒器の第一弾の桜でした」

石島 「酒器というモノ自体はできていたけれどこれまでの製品と違いすぎてどう売りだしたらいいか分からない、路頭に迷っていたような時期だったんですね」
木村 「そうそう。実物を見せてもらったら、「え、これめちゃめちゃいいじゃないですか!」となって、私が食い気味に意見を出し始めました(笑)山後部長とはその日が初対面だったのにいきなり新商品の売り方から話が始まりそうになり、そもそも誰でしたっけ?って山後部長は終始ハテナでしたね(笑)」
石島 「ライターとして紹介された木村さんが、まどろむ酒器の営業戦略から考えるチームに加わることになったんですね」
木村 「私にとって最初のスリースノーさんとの出会いは、桜柄のまどろむ酒器という「モノ」で はなくて、実は、山後部長という「人」。初対面でしたが、話し方や雰囲気から山後部長とお仕事をご一緒させてもらいたいと思いました。今までもわたしのキャリアにおいても「この人と仕事がしたい、この人とならできる」と思えることが軸にあります」
石島 「商品の裏にある人の想いを受け取って、自分も得意分野で輝かせたいという気持ちが掻き立てられたんですね。理解できるような気がします」
木村 「そうですよね、基本わたしは単純です。ライターになりたかったきっかけもシンプルですし(笑)前から話しているけれど、「熱狂型」な人なので(笑)今も昔もとりあえず行動するタイプです」
石島 「木村さんのそんなところにこちらも助けられています(笑)」

木村 「私がやり続けたいことは、「愛を持って人と接して、ライターとして役目を果たすこと」。そういう気持ちがなくなったらもうやらなくていいかなと感じています。必要とされるところに寄り添い続けたいですからね」
プロダクトを自分ごとにする「コラム」というアプローチ
石島 「まどろむ酒器をきっかけに、今ではスリースノーの広報すべてにアドバイスをいただいていますよね。このコラムに関してもたくさん相談に乗っていただいています。 このコラムを始めるタイミングで、まず木村さんに相談があったのでしょうか?」


木村 「そうですね、山後部長は自分の頭のなかに伝えたいことや語彙がたくさんある方なので、「絶対にコラム向き!」としかけたんですよ(笑)知識や想いを共有しないのはもったいないので何かにアウトプットして残したほう絶対いいという意味でも勧めました」
石島 「アウトプットして共有するのは大事ですよね。わたしも過去のコラムを読んで勉強したりします」
木村 「スリースノーの「開発」というジャンルにおけるアーカイブの要素はもちろんですが「開発するきっかけになったことを語るのも面白いんじゃない?」と提案しました。商品が完成したことを伝えるプレスリリースではなくて、開発の裏側には沢山のプロセスがあることを広く知ってもらう場になれると思ったんです。商社さんやお客さんも含め、外部に伝える大義がありながら、コラムを通して過程を発信することで、社内の皆さんにも変化が生まれると思ったんです」

石島 「少しずつコラムの仕事にかかわることが増えてきて改めて思いますけど、コラムがあることで自分事に感じることがあります」
木村 「すごく大事だと私は思います。例えば、新商品が完成して流通が始まっていても、実際に商品に触れたことがない社員さんは当然いますよね。自分事として製品を捉えることが難しい場合でも、コラムを介して自分事にできたり、見えてくるものがあると思うんです」
Interview and Text: Shizuku Ishijima
Edit: Hayato Sango
Photo: Kakeru Ooka
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