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  • 2023.01.11
  • 特集

スワオメッキの開発力

前編では金メッキの概要を教えていただき、その魅力と工程の概要について伺いました。中編ではスワオメッキさんの背景と内部に迫っていきます。

鈴木康仁さん
新潟県燕市、金属の表面処理加工(メッキ加工)を専業とするスワオメッキ有限会社常務取締役。29歳の時に家業であったスワオメッキに入社し、自社の技術を広げるべく奔走中。令和 3 年度燕商工会議所青年部会長を務め、燕市内の企業間の連携強化にも尽力している。燕市独自のものづくり品質管理制度「TSO(Tsubame Standard Organization」2013 年取得。装飾性と抗菌性を備えるゴールドメッキの技術は市内外の企業から幅広い支持を集める。

※聞き手:山後隼人(新越ワークス スリースノー事業部

スワオポリシー

山後「多くの量を効率よく加工していかなければならない以上、何工程も人の手によって汚れを除去していく作業ってなかなか厳しいと思うのですが」

鈴木「うちは”化学の力と匠の技術で金属に「化匠(けしょう)」をし、世の中を明るく輝かせる。”という企業理念を掲げています。この仕事をいただいた時にも、第一に考えるのは世の中の役に立つこと。うちの技術でこの茶こしに光を与えて、この商品を手に取る人が喜ぶような仕事をしたいと思っている。その気持ちがあるから、トラブルが起こった時にも対応ができると思っているし、なんとかしてやりたいと思って解決策を考えます。(山後)隼人くんが「こういうふうに形にしたい!」ってうちに頼んでくれた想いがあって、そのバトンをくれたからには応えたい、喜ばせたいという想いで注文を受け取っているよ」

山後「なるほど。その姿勢から生まれるものがスワオさんの開発力につながっていくのだと感じています」

鈴木「そうだね。自分たちがルーティン的に対応できない商品こそ、たとえばメッキする時の電気量をどうするか考えたり、どういう工程を組むか考えたりする。俺とか専務とかが社員と一緒になって試行錯誤する時間で一生懸命考えるし、うちの専務はそういう時に一切妥協せずに、微妙な条件の調整まできっちりやってくれる」

山後「専務さんは工場の責任者的なポジションですか?」

鈴木「そうそう、うちの現場(工場)を守ってくれたのがうちの専務。言い換えればうちのメッキ場を作ってくれたのは専務だとも言える。俺は専務のことを”メッキの神様”だと思って尊敬しています」

山後「基盤を作ってきたんですね」

<スワオメッキ専務取締役 岡田吉晴さん(左)と常務取締役の鈴木康仁さん(右)>

鈴木「俺は専務から一つのものに向き合う姿勢を教えてもらったのもあって、自分の大切な仕事観として一つの物事に向き合うことをとても大切にしている。工場を見てくれていた専務と対になって経営してきたのがうちの社長で、社長は営業でお客さんのところをひたすら回ってきた。二人それぞれで役割みたいなのがあったんだわ」

山後「なるほど。そこに今の鈴木常務がいらっしゃる体制ということですね。(組織として)強いですよね」

鈴木「そうかもね。俺としては専務と社長が守ってきたこのやり方に、どう一手間を加えていくかということなんだよね。これまでのスワオメッキを作ってきた歴史の上にプラスの価値を作っていきたいと思っています」

「スワオ」の由来:鈴木と岡田

山後「そもそもスワオメッキさんの社名の由来はなんだったんですか?」

鈴木「うちの親父の名前がスワオって言うんですか?ってよく言われるんだけど、違くて(笑)。うちの親父であり社長が鈴木、うちの専務が岡田なんだよね。それが”和をなして”やろう、と言う意味が込められているので『スワオ』なんです」

山後「なるほど!こんな身近だったのに初めて知ったかもしれないです(笑)。社名にも二人三脚のニュアンスが含まれているんですね」

鈴木「そうだね。二人はもしかすると子供が独り立ちするまで力を合わせて頑張ろうと思ってやっていたのかもしれない。俺は社長の背中を見て育ったし、学生の時にもたまに会社の仕事を手伝っていたから、自然と俺が継ぐんだろうなーという意識で今こうして形になっているという感じですかね」

山後「なるほど。やっぱり由来まで掘り下げると初めて知る姿が見えるようで面白いですね!せっかくなので工場の方も見学させていただいてもよろしいですか?」

鈴木「ぜひ!案内しますね」

工場見学へ

山後「たくさんの治具(※加工する際に加工されるものを固定し作業のガイドとなる装置のこと)がありますね。何種類くらいあるんですか?」

鈴木「これで 200 種類以上はあるよ。それぞれの製品の形状によって最適な治具を選んでセッティングしています」

山後「そうなんですね!一口にメッキと言っても色々な形状の商品があるなと感じますね」

鈴木「そうだね。製品の構造や重さによって条件はもちろん変わってくる。流す電気量や治具の形、洗浄の方法などは試行錯誤しながら蓄積してノウハウになっているよ」

山後「なるほど。製品それぞれで異なる最適なメッキの条件は、複合的な要素を総合的に判断する必要があって、その条件を見極めて治具を選定し方法を構築する。それが肝心なんですね」

鈴木「その通りです。俺が言いたいこと代弁してくれたね(笑)」

山後「やっぱり何度見ても新しい発見があって面白いですね。こうやって色々な製品をメッキしていると、工場に製造ノウハウや商品知識が蓄積していきますよね」

鈴木「そうだね。神輿やさんが来れば神輿の話になるし、洋食器であれば洋食器の話になるから、その分だけ勉強させてもらっているよね。うちは運がいいことに色々なお客さんと携われるから、自分たちの技術を知ってもらわなくてはならない。色々な宣伝方法を通じて発信したいと思っているよ」

山後「そうですよね、確かに」

引き継ぐ伝統、壊す伝統

鈴木「燕あるあるでさ、昔は“あまり自分たちのことを宣伝しない方がいい”という美学的なものが地域にあったけど、俺はそれをぶっ壊そうと思っているよ(笑)」

山後「いいですね〜!そうですよ、ぶっ壊していかないと!(笑)うちも似たようなところがあって、スリースノーの道具は厨房用品だし、自分たちの名前を出すことにこだわらなかった過去があります。これからの時代、道具は自分たちが思っても見なかったところで役に立っているかもしれない可能性だってある。そう思うと自分たちの商品や名前をどんどん出していくことは一つの正解だと思っています」

鈴木「本当そうだよね。宣伝することで、商品を見つけてくれたお客さんが使い方や組み合わせを勝手に考えてくれることだってある。だから宣伝しない手なんてないんだよね」

山後「間違いないです。自分たちが変化するという点では少し大変なこともあるかもしれないですがやっていきたいですよね」

鈴木「長年同じことをやっていると自分の考えが凝り固まって変化するのを恐れるようになってくる。だけど、例えば自分より若い人の意見だって年齢関係なくいいアイデアとして取り入れるべきだし、燕は横の連携が強くて接点が多いから、交流するほど勉強になることもまた多い。燕全体でいい取り組みや考え方を学び合っていければいいんだろうね」

山後「その通りですね。僕も引き続き勉強させてください!」

これまで手がけてきた商品の蓄積が今を支える力になる、そして新しい取り組みへの間口が開かれている。スワオメッキさんの工場、人、そして企業ポリシーからはそんな姿勢を感じることができました。続く後編では茶こしをメッキすることの全容と知られざるメッキのもう一つの価値について教えていただきます。

Text: Hayato Sango (ThreeSnow)
Photo: Atom Munemura (Office-Atom)
Edit: Mayuko Kimura

↓前編はこちらから↓
https://threesnow.jp/news/feature/23011001/

↓後編はこちらから↓
https://threesnow.jp/news/feature/23011201/