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  • 2022.08.24
  • 特集

「ビールが苦手」は克服できる!?ビールの魅力、外食の価値とは 谷中ビアホール女将吉田さんを訪ねて①

1. みんな大好き!?ビールの魅力とは

お酒のド定番といえば、ビール。CMでは今をときめく俳優たちがこぞって美味しそうに飲む、アレです。飲み会の最初の乾杯やBBQ、スポーツ観戦などでは決まってビール!これはもはや現代の定番のシーンとも言えるでしょう。人々はなぜビールに魅了されるのか。我々がビール好きになったのはいつからなのか。ビールのうまさとは?ビールとの出会い方は?健康志向の強い現代におけるビールの立ち位置は?さまざまな視点から見るビールに対する疑問を東京谷中にある人気ビアホールの女将、吉田瞳さんに聞いてみました!

吉田瞳さん
有限会社イノーバー・ジャパン代表取締役。東京都谷中にある昭和13年築の古民家「上野桜木あたり」にて、2015年から「谷中ビアホール」を開店。常時8種類の生のクラフトビールが味わえるお店として、国内だけでなく国外からもファンが訪れる。スリースノーのフレーバーチューナーの共同開発者でもあり(共同開発ストーリーはこちら)、お店ではシーズンごとの食材を使ったオリジナルのフレーバービールが楽しめる。現在、女将としてお店に立ち続けながら、ビールの魅力を日々探求し発信している。

※聞き手:山後隼人(新越ワークス スリースノー事業部)

2. 『ビールが苦手だったビアホールの女将』

山後「今日は谷中ビアホールの女将でもある吉田さんにビールについてあれこれ語ってもらおうと思います。今日はよろしくお願いします!」
吉田さん(以下、吉田)「こちらこそよろしくお願いします!今回の企画をいただいてから、あれもこれもしゃべりたい!!って気持ちで今日を迎えました(笑)」
山後「それは楽しみです(笑)。早速ですが、今回のテーマ、ビールについて。私自身もよく飲みますが、吉田さんはやっぱりよく飲まれるのですか?」
吉田「毎日飲みます!量はそこまで多くはないですが」

山後「そうなんですねー。変なこと聞くようですが、毎日飲む理由ってなんでしょうか?単純に好きだから、とか?」
吉田「2点あって、好きになったから、ということ、飲んでいくと、日々味の違いが感じられるということですね。ビールって、毎日飲むと味の違いを感じるようになるんですよ。自分の体調の違いなのか、ビールなのか(笑)そこが知りたくて毎日飲んでますね」
山後「へえーー。ちょっと研究っぽいですね」
吉田「そうですそうです!ちょっと実験ぽくて。醸造する時の樽の違い、昨日食べたものの違い、その日の疲れ具合とかで味が変わったように感じるのって面白いなぁと、最近感じるようになりました」


山後「確かに、それは面白い要素ですよね。少し話が戻りますが、そもそもビールはお酒の中でも好きな方ではなかったですか?」
吉田「実はわたしビール飲めない人だったんです、、、」
山後「なんと。今の吉田さんからは想像できないですね(笑)」
吉田「ほんとに(笑)。飲み会に行っても『とりあえず生で!』という流れに乗れないタイプでした」
山後「ビールを飲めない方も当然、一定数いますもんね」
吉田「ただ、今となっては、当時、雑多にビールと出会ってなくて良かったとも思っています」
山後「確かにそうですね。ビールが飲めるようになったのはこの谷中ビアホールがきっかけですか?」
吉田「そうです。ビールを提供する上で、ビールを飲んでないわけにはいかないなと(笑)」
山後「そこで勉強してみようという感じで飲むようになったのですか?」
吉田「はい、まずは試してみようと」

3. ビール初級者にこそ「クラフトビール」をオススメしたい

山後「私の周りでも20代前半は「ビールは苦手」という方が結構いました。吉田さんの”飲めなかった頃”となんとなく似ているなと感じます」
吉田「結構いると思うんです。最初に出会うビールが”苦いビール”だと印象が悪くなってしまうというか。なので私としては『誰かのおすすめのクラフトビール』から始めた方がいいんじゃないかなと感じているんです」

山後「吉田さんがまさにそうだったということですね?」
吉田「はい、私がそうだったんです。アウグスビールを初めて飲んだ時のことです。当時シーズナルで出していたアップルラガーというビールがありまして。今でいうフレーバーチューナーで出すような新しいビールの味だったのですが、とてもとっつきやすいビールでしたね。ビールを美味しいと感じていなかったので“ビールうまいじゃん!“とはじめて思ったんです。それがこの谷中ビアホールを始める1年前の2014年のことでしたね」

山後「意外と最近の話なんですね!(笑)」
吉田「そうです(笑)ビールの印象はそれまで『苦い』でしたが、味が意外と深いんだと気付けたというか。麦茶を彷彿とさせるような麦の味わいと、特に泡の部分に苦味を感じていた私は、泡の少ないクラフトビールを見て、“泡がなくてもビールは美味しいんだ”という新たな発見があったのをよく覚えてます」
山後「面白いですね。確かに苦いビールの泡が『苦い』と感じるのはわかる気がします」

4. 醸造に立ち会ったことで見えたビールの魅力

山後「吉田さん、ビールの醸造所に行ってましたよね?」
吉田「そうなのです。オリジナルのシーズンビールは、群馬県の川原湯温泉というところで醸造しているんです」
山後「醸造するところの紹介を以前しておられたのがとても興味深くて、その経験を聞かせてほしいと思っていました」

群馬県川原湯温泉にある「川原湯温泉醸造舎」

吉田「味や香りについてもたくさん発見がありましたが、一番の発見といえば『麦』の重要性ですね。実際に醸造に立ち会ってみたら、ビールの味の一番の決め手になるのが『麦』なんだと確信しました」
山後「なるほど」
吉田「表現が少し難しいのですが、ホップはビールを口に近づけた時に入ってくる香りで、第一印象を左右するのですが、そのあとビールが喉を通った後に感じる香りは麦の香りなのです」
山後「へえー!なるほど!」
吉田「つまりビールの決め手になる原料が麦。そうなると麦芽が美味しければ、ビールはうまいことになるんです。原料としては水の次に多いのが麦芽なので」


山後「意識して飲んだことはなかったですね!麦の種類によっても変わりますか?」
吉田「一つのビールを作るにも、小麦麦芽と大麦麦芽という大別すると2種類がありまして。それを何種類も組み合わせたり、同じ種類でも裁断のされ方が違っていたり、大きさの違うものが入っていたりして、その組み合わせ次第で味は変わってきます。しかも、その味を決めるブレンドの段階がビール造りの工程でもかなり序盤の方にあるんです!」
山後「10段階で言うとどのあたりになりますか?」
吉田「2段階目くらいです」
山後「早っ(笑)そこで味が決まるんですね」
吉田「そうですね。味もですが、外見の色もおおよそ決まります」
山後「すごい!それは発見でしたね」
吉田「ああ!ここなんだ!って思いました(笑)」

5. ビールの好み、ビールとの出会い方

山後「谷中ビアホールさんで提供されているビールのメニュー表には、一つ一つのビールの特徴、味のバランスが記載されていていますよね」
吉田「初めて利用する方にも味のイメージがわかって選びやすくなるように表しています」
山後「日本語で表現できる『苦味』や『コク』は、各々個人の感覚で当てはめていくと意外と違うことがあるかと思うのですが、どうですか?」
吉田「苦いタイプがダメな人でも『苦い』と書かれているビールを「これはいけるかも」と感じることもあります。人によってどこで苦味を感じるのかということですよね。ビール初心者の方は、甘みを感じやすい傾向にあるので甘みの強いビールをうちではお薦めしています。逆に玄人で苦味が好きな人に苦めのビールをお薦めしたりするのですが、思ったより苦手と思っていた方がコクを感じて良いと言ってくれたり、苦味を先に感じたからこっちよりもそっちの方が良いと言う感想があったりします」
山後「なるほどですねー」

吉田「同じ説明をしても、皆さんの感じ方が違うんですよ。日常で好まれているビールが分かれば、より深掘りできるのかもしれません」
山後「そういう意味でも、谷中ビアホールさんで出されている4種飲み比べセットは、色々な味に出会えると言う点でも魅力的ですよね。言語的に正確に分解できなくても味を実際に感じて、自分の好きに出会えますね」

6. 家飲みビールと店飲みビール

山後「お家で飲むビールとお店で飲むビール、吉田さんから見てどんな違いがあると思いますか」
吉田「まず、生ビールを飲めるかどうかですね。ホームタップがあるご家庭はもしかしたら楽しめるのかも知れませんが、やはり缶、瓶、生ビールというのは明らかにステップが違う気がします。例えばハンバーグを食べるにしても、真空パックになっているものを温めたもの、お肉はお店から出すけど家の中で焼くもの、お肉も調理もお店の中で調理されるものとではそれぞれが違う味に感じる、というイメージでしょうか。ビールもそれぞれの形式で味の違いはあると思っていて。特にお店で出す生ビールはより醸造したてのものに近いと思いますね」

山後「なるほど。ハンバーグを焼く時の火力や油の量で家庭とお店とでは圧倒的に状況が違うと想像できますね。ビールも生ビールは設備や冷蔵の仕方など、お店の規模でしか再現できない部分はありますよね」
吉田「はい!たとえば瓶の飲み口が好きで、あえて瓶を選ぶ方もいらっしゃいますから。ただ、お店で生ビールを飲むことで言えば、やはり『生産者に近い』と表現できるような魅力があるのではないでしょうか。それと、私が重要視しているお店の魅力は、お店で飲む=空間と時間を費やして五感を満たす、という点ですね。そこが家で飲むビールとは大きく違う部分なのかなと思っています」
山後「確かに。味だけではなく、お店には空間が存在しますもんね」
吉田「お店で流れるBGMもそうだし、他のお客さんがお話ししている音も、お店ならではですよね」

7. 外食とは『ちょっと日常をおいてきた』時間が作れる場所

山後「私たちスリースノーは外食の道具を作っているので『外食』をキーワードに聞いてみたいのですが、外食の魅力ってなんだと思いますか?」
吉田「私にとって外食の魅力は、『日常を離れる』なのです」
山後「これは非日常とイコールですか?」
吉田「イコールかな、いやちょっと違うかも。外食の時間を2時間とすると、日常の中にできた2時間の非日常の時間は『日常をちょっと置いてきた』くらいの感覚なんだと思うんです」
山後「なるほど」

吉田「頭の片隅に、家に帰ったらこれやらなきゃ、とかの意識がよぎりつつの2時間なんだと思います。日々の生活に切り取られた”こっち側”というか。外食することで、その”こっち側”にいくことなのではないかなと思います」
山後「僕も外で飲むことが好きなのでその感覚はすごくわかります」
吉田「コロナで外食できなかった時期に、外食の時間を作れなかったことで体調を崩される方もいらっしゃったと聞きます」
山後「それはあると思いますね」


吉田「週に2時間でも、月に2時間でもいいけれど、定期的に日常の時間の流れからこちら側へ持ってくる時間が、人にとっては必要なことなんだと思います。飲食店がこれだけあるのも、それだけ人に必要とされているからなんだとも思っています」
山後「連綿と続く日常の時間の流れから、一度離脱して日常を置いてくるっていう捉え方ですよね。とても興味深いです。このコロナの期間は真っ先に外食産業がやられてしまい、制限されてしまいましたよね。外食の価値を改めて考え直す時間になったことは、飲食店さんはもちろんのこと、私たちも同じでした」
吉田「そうですね。でも、外食はそういう意味で絶対に必要なんだと思っています」
山後「外食のポジションは単にレジャーではなくて、人間が健全に生きていけるための必須産業とも言えますよね」
吉田「そうなのです。なので、外食と非日常をイコールで結ぶのは少し違和感があったのです。日常の延長にあるようで、少し違う時間。人数によってもシーンによっても使い分けていけるようにこれだけの飲食店としての選択肢が世の中にあるのだと思います」
山後「人間関係のパターンの数だけ、飲食店の数があるような気もしますね」

盛りだくさんのビールの魅力。ビールの概念を覆す吉田さんのお話は次回へ続きます!

Text: Hayato Sango (ThreeSnow)
Photo: Shino Enoki (ThreeSnow)/ Uta Mukuo
Edit: Mayuko Kimura